HILS

HILSとは?MILS等との違いや導入メリット|おすすめ会社3選

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自動車産業分野を中心に、新しい開発手法としてモデルベース開発(MBD)が注目されています。その開発シミュレータのひとつである「HILS」も、新しい技術やニーズへの対応が求められる多くの分野で導入が拡大しています。
今回の記事では、HILSの概要や類似シミュレータであるMILS/SILS/S-PILSとの違い、HILSのプラントモデルの種類などについて解説します。

テクノプロ・デザイン社は、製造メーカーの検証の安全性や精度の担保、工程の削減といった課題へのソリューションとして、以下のような豊富なHILS導入支援の実績があります。

  • HILS構築運用(ADAS/xEV/車体制御/EPS/シャーシ等)
  • プラントモデリング/コントローラモデリング/実装モデリング支援
  • 検証環境自動化支援
  • パワートレインのプラントモデル開発
  • 燃費シミュレーションモデル開発
  • 産業機器向け油圧制御/表示機ECU開発

全国30か所以上の拠点によって迅速・綿密な対応が可能なテクノプロ・デザイン社が、モデルベース開発はもちろん、HILSの導入においても強力にサポートします。ぜひご相談下さい。

目次

HILSとは?モデルベース開発との関係

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HILS(Hardware In the Loop Simulator またはSimulation)とは、制御装置であるECU(ECU:Electronic Control Unit)と、制御対象を模擬したHILS装置で構成された評価環境です。
主に自動車分野でのECUソフトウェア試験の効率化を目的として、HILSは誕生しました。

自動車分野のエンジンや車間距離制御システムでは、ECUはアクチュエータ装置(点火プラグ、モータ、油圧バルブ等)を、電気信号を介して制御し、制御対象の状態(エンジン、車速、車間距離)を制御します。
また、ECUは制御対象の状態をセンサー装置(温度、流量、カメラ等)から電気信号を介して測定することで把握し、そしてそれを基に制御量を調整します。
HILSでは、アクチュエータ装置とセンサー装置に代わり、HILS装置をECUに接続します。制御対象の制御に対する振る舞いや状態はHILS装置に組み込んだプラントモデルで模擬します。

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引用:HILSとはなにか

 HILSはプラントモデルと呼ばれるシミュレーションモデルを用いてECUの制御に対する制御対象の挙動をシミュレーションさせます。HILS装置はプラントモデルがシミュレーションした結果(数値データ)を、実センサー装置の代わりに信号を模擬してECUに返します(フィードバック)。ECUはフィードバックされた情報を基に新たな制御を行います。
HILSはECUとHILS装置の間で制御ループを構築することが特徴です。

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【参考動画】HILSの具体例は以下の動画が参考になります。

引用:電動パワートレインのためのHILシミュレーション

HILSとMILS/SILS/S-PILSとの違い

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HILSと似ているシミュレータである、MILS/SILS/S-PILSとの違いを解説します。

MILSとは

MILS( Model In the Loop Simulation)とは、モデルベース開発(MBD)の仕様設計段階の制御モデルとプラントモデルで構成されたシミュレータです。制御処理をコンピュータ上でシミュレーションさせることで、開発序盤の仕様検討段階で制御システムの動作検証を行い、仕様の精度を高めます。

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 HILSが開発の終盤でECUとHILS装置を用いて実機に近い環境でECUソフトウェアの評価を行うのに対し、MILSは開発の序盤である制御仕様の設計段階で、制御モデルの動作を確認しながら制御の仕様を検討します。

MILSを用いることで以下のメリットがあります。
①仕様を数式ベースで表現でき、そのままシミュレーションさせることができる
②設計段階で仕様の不備を見つけることができるため、後工程での仕様不備に伴う後戻りによる開発工数増加を防止できる
③MILSで作成したモデルを、SILSやHILSへ流用が可能

SILSとは

SILS(Software In the Loop Simulation)とは、制御コードとプラントモデルで構成されたシミュレータです。
制御コードは、制御モデルからC言語などのソースコードに変換されたものを使用します。制御対象はMILSと同様にプラントモデルを使用します。
SILSではモデルからコードに置き換えたことによる影響の動作検証を行います。
HILSとの違いは、ECU回路、マイコン、ハーネスのHW的な影響がSILSには表れないことが挙げられます。

HILSのシミュレーションで活用するプラントモデル

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HILSは、プラント実機の代わりに仮想的なプラントである制御プログラム「プラントモデル」をECUと接続することで挙動や制御を数値化し、制御ループを構築してシミュレーションを行う技術です。HILSで活用するプラントモデルは、大きく分けて物理モデル統計モデルの2種類があります。

物理モデル

物理モデルとは、制御対象(プラント)の挙動を運動方程式に置き換えたプラントモデルです。運動方程式の精度を向上させることで、より実際に近い動作を再現できます。

対象システムの設計仕様があれば、実機が存在しなくても物理モデルの作成は可能です。精密なモデルでも、モデル周期時間内に動作できる範囲であれば、HILSに組み込める特徴もあります。
ただし制御対象の物理的な仕組みを理解できない、またはシステム仕様が得られない場合は、物理モデルの作成は不可能です。

統計モデル

物理モデルが実機の挙動を基に運動方程式で算出され置き換えたプラントモデルであるのに対して、統計モデルとは実験データから作成されるプラントモデルのことです。

物理モデルと比較すると、検証における処理負荷を抑えられるメリットがあります。ただし慣性値などのプラントモデル作成に必要なデータがない場合には、データを取得するための実験が必要です。

HILSを用いたテストがもたらすメリット

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HILSが実機を用いたECU評価の代わりに注目されるようになった背景には、HILSがもたらす多くのメリットがあります。
HILS導入によって得られる具体的なメリットを解説します。

工程数削減による開発期間の短縮

HILSは制御対象装置に代わって、プラントモデルを用いた検証ができます。そのため、制御対象装置の完成前に制御ソフトウェアの検証を実施することで開発までの工程数が削減され、開発期間の短縮が期待できます。
HILSによって、実際の制御対象装置を作成する前にミスや漏れを発見できるようになれば、実質的な工程数の削減だけでなくやり直し工程の削減にもつながります。

特に自動車産業では、EV車や自動運転の制御システムの向上や実用化など、市場ニーズに対応した新技術の開発スピードが早いという特徴があります。HILSによって開発期間の短縮化を実現できれば、新技術を搭載した製品開発の効率化やスピードアップによる、自動車メーカーの生産性や企業の競争力の向上にもつながるでしょう。

コスト削減

HILS環境を用意することで、検証工程に必要な実機を削減することができます。実機の製作費用(購入、組立、動作確認)といったコストを削減します。
実機を用いた試験を行う前にHILSで試験を行うことで、ECUソフトウェアの不具合を事前に発見することができ、実機工程からの後戻り回数を抑制でき、適合作業に専念することができるでしょう。

24時間体制での運用が可能

HILSは、24時間自動運転による検証が可能です。不具合発生時も、前提条件のプラントモデルを活用した繰り返しの検証ができるため、急を要する検証にも対応できます。

シミュレーションによる安全性の担保

負荷の多い検証や、実機では安全性の担保が難しい高速・高温下などにおける検証でも、HILSなら安全に実施できます。実機で同じ条件を発生させるのが難しい、運転中に生じる不具合や故障などの検証もHILS環境下であれば容易です。

HILS導入の課題と注意点

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HILSは開発工数削減に対し、開発日程の短縮やコスト削減、検証における安全性の担保などの多くのメリットが得られる手法です。一方で、HILSの導入には多くの課題もあります。
ここでは、HILS導入における課題と注意点を解説します。

プラントモデル HILS HWの整備が必要

HILSは制御対象(プラント)の代わりにプラントモデルを用いてECUによる検証を行うため、プラントモデルのモデリングが必要です。プラントモデルのモデリングには、MathWorksが提供するSimulinkやSimscapeなどを代表とした、プラントモデリングツールが必須となります。

HILSの導入にはプラントモデリングツールの導入費用と、モデリングのためのスキルや知識運用できる人材が求められます。
プラントモデル作成の内製化が難しい場合は流通しているモデルを購入・転用することも可能ですが、購入したモデルをHILSに用いる場合は、自社の製品や検証内容、検証時のリアルタイムでの動作連動に応じた変更などが求められます。

また、HILS装置は高価であり、その導入にも高額な費用が必要です。モデリング同様、構築スキル、HILS SWのスキルや知識、そしてそれらを運用できる人件費も必要です。

費用対効果を考えた投資が必要

HILSの導入によって開発工程の削減やコストの削減につながるものの、HILS関連機材の導入をはじめとした費用が発生します。企業内でHILSを用いた評価案件が増えれば増えるほど、必要となるHILS環境の台数も増えていきます。

HILSの導入には多額の投資が必要であり、費用対効果を考える必要があります。

リアルタイム性能と精度の保持が必要

HILSで活用するプラントモデルによっては、動作が重たくなることで検証時にリアルタイムで動作に連動できず、制御や挙動などの適切な数値化や検証ができない場合があります。その場合、物理計算を変更してプラントモデルの動作を軽くするなど、リアルタイム性能と検証精度を保持するための作業が必要です。

そのためのスキルや知識、人材を自社で賄うのが難しい場合には、HILSの導入支援サービスも検討すると良いでしょう。HILSのスムーズな導入や、生産性の向上などの効果につながることが期待できます。

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HILS導入の障壁解消に向けて

HILS導入には上記で述べたような課題があります。

これらの課題解消のためには、モデルベース開発(MBD)を用いることが有効です。MILSで使用しているプラントモデルをHILSに流用することで、HILS環境構築作業において、プラントモデルの作成工数を削減することができます。
しかし、HILS導入のみで満足してしまいモデルベース開発へのモチベーションが上がらない、モデルベース開発にはハードルの高さを感じてしまう、などの理由でモデルベース開発の導入が進まないことも多くなっています。

テクノプロ・デザイン社ではHILSだけでなくモデルベース開発関連の支援(MBD導入支援、コンサルティングやMBD人材育成支援など)の実績も豊富です。HILSの導入によるボトルネック化を解消し、一歩先の生産性の向上や企業の競争力の強化を実現のためにお役立てください。

HILS導入支援におすすめの会社3選!

 テクノプロ・デザイン社

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引用:テクノプロ・デザイン社

モデルベース開発の上流工程から下流工程まで一気通貫でのサポートが可能な会社で、モデルベース開発だけでなく、HILSの導入に関しても安心して任せることができます。
自動車だけでなく、例えば、農機や建機、物流、航空宇宙、医療など、実機を作りにくい領域、さまざまなシミュレーションが必要な幅広い領域に精通しています。

また、拠点が全国にあるため迅速な対応が可能で、綿密なサービスが期待できることは依頼する際の大きなメリットでしょう。

テクノプロ・デザイン社によるHILS運用支援の具体例は以下の記事をご覧ください。

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<会社概要>

本社〒106-6135 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー35階
TEL: 03-5410-1010 / FAX: 03-5410-1011
問い合わせhttps://www.technopro.com/design/contact/
営業所・開発拠点札幌、仙台、山形、郡山、つくば、水戸、宇都宮、群馬、千葉、埼玉、八王子、品川、三田、横浜、川崎、厚木、湘南、新潟、松本、甲府、静岡、浜松、豊田、名古屋、四日市、仮谷、富山、金沢、京都、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、北九州、熊本それぞれの住所、電話番号等はこちら
事業内容AI、制御システム、機構・ハードウェア・ソフトウェアを中心とする技術領域における技術開発分野や商品開発分野への技術サービス、コンサルティングサービス

株式会社エー・アンド・デイ

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引用:株式会社エー・アンド・デイ

HILS開発技術者による柔軟なエンジニアリングでの支援が期待できる会社です。PCセットアップ等、基本的な立ち上げ作業から、IO通信設定、ECU試験のためのフェール対応まで必要となる各種業務を依頼できます。

他社製HILシステムと弊社HILシステムを連携した、統合HILS環境の構築のためのI/F設計や製作も可能です。

<会社概要>

本社〒170-0013   東京都豊島区東池袋三丁目23番14号
問い合わせhttps://www.aandd.co.jp/support/contactus.html
営業所・開発拠点札幌、仙台、宇都宮、埼玉、静岡、名古屋、大阪など詳しくはこちらをご覧ください。
事業内容電子計測器、産業用重量計、電子天びん、医療用電子機器、試験機 その他 電子応用機器の研究開発、製造、販売

ガイオ・テクノロジー株式会社

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引用:ガイオ・テクノロジー株式会社

ガイオ・テクノロジー株式会社は以下のようなHILS導入支援を行っている会社です。
・構成検討、機材見積発注(導入コンサルティング)
・CAN、車両、ECU等の各種モデル構築
・オペレーション教育
・テスト代行、定着支援
・各種モデル、データベース等のメンテナンス
・リモートサービス

<会社概要>

本社〒140-0002東京都品川区東品川2-2-4 天王洲ファーストタワー25階
TEL:03-4455-4767
問い合わせhttps://www.gaio.co.jp/contact/
営業所・開発拠点天王洲オフィス、松山オフィス
事業内容・組込みソフト開発検証ツールの開発、販売、保守事業
・エンジニアリングサービス、技術者派遣事業

まとめ

HILSと似ているシミュレーションとの比較やHILSの導入メリット、導入時の課題と解決方法を解説しました。
今後自動車分野だけでなく、製造業の多くの分野でHILSの重要性が高まるでしょう。

また、HILSやモデルベース開発の開発支援なら、豊富な経験と実績を持つテクノプロ・デザイン社にぜひご相談・お問い合わせください。
モノづくりからIT産業まで幅広いテクノロジーに秀でたエンジニアを7000人以上有し、日本全国に展開している拠点が確実なソリューションを迅速に提供します。

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