メタバース・デジタルツイン

【製造業】メタバースの事例10選!デジタルツインとの違い・仕組み

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近年、製造業においてもメタバースの有用性が注目され、さまざまな企業で導入がはじまっています。本記事では、具体的なメタバース導入事例を通じて、メタバースの導入によるメリットや課題、そして今後の展望について解説します。

製造業へのメタバース導入をご検討の際は、テクノプロ・デザイン社へご相談ください。
メタバースやデジタルツインはもちろん、VRの導入などさまざまな技術の導入を、経験豊富なエンジニアが支援します。

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目次

メタバースとは?デジタルツインとの違い

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メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間です。

リアルタイムオンラインゲームの世界ではすでにメタバースが普及しており、ユーザーはアバターと呼ばれる自らの分身で仮想空間内を自由に見回したり、好きな場所へ移動できます。

製造業におけるメタバースでは、仮想空間内に再現したモノを間近で好きな角度から見たり手に取ったりすることができ、広さや重さといった現実世界での制約を取り払った状態で多面的かつ詳細な検討に活用することができます。

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メタバースの中でも、現実世界をスキャンして忠実に再現したものは特にデジタルツインと呼ばれます。

製造業におけるデジタルツインは、仮想空間内に再現された設備を利用して、実機製作前に組み立てや取付のシミュレーションをしたり、複数の試作機を入れ替えて検証したりできます。開発期間や製作コスト、作業工数といった制約に縛られずに検討可能です。

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デジタルツインについては、以下の記事でも解説しています。

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メタバースの製造業への活用シーンとメリット 4選

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メタバースの活用シーンとそのメリットを4つ順番に紹介します。

製品設計のシミュレーションによる品質の向上・リスクの抽出

メタバースは、製品設計のシミュレーションに有用です。

製品設計後にモックアップを作成、動作シミュレーションを行いさまざまな設計課題の抽出を行っていた従来の工程を、メタバース内でのシミュレーションで行うことによって時間短縮につながります。
さらに、メタバース上で関係者と図面を共有でき、検討も視覚的に行えるなど設計業務そのものの業務効率化が期待できます。

シミュレーションへのメタバース活用については以下の動画も参考にしてください。

引用:新ビジネスへの活用に期待…3次元仮想空間『メタバース』の最新技術を紹介 名古屋でのイベントを前に内覧会 (2022/11/08 05:16)

オペレーターシミュレーションによる検討の効率化

生産ラインなどにおいて、新たな設備の導入や工程の作業性を検討する際のシミュレーションにメタバースが活用できます。

効率的な人員配置検討や、仮想設備でのオペレータートレーニングにもメタバースが活用できます。
作業や設備の危険な個所の抽出を安全なメタバース上で行えることが大きなメリットです。仮想空間によるシミュレーションなら作業員が怪我をするリスクがないため、重大事故の予防につながります。

メタバースであれば現実世界に近い状態で検討できるため、実ラインに支障をきたさずシミュレーションの効率化を目指せます。

現場作業への応用

俯瞰的なラインオペレーションにメタバースを活用できます。他の作業者との情報共有を視覚的に行うことで、トラブルの予測や対処、改善策の立案がしやすくなります。

生産ラインをメタバースによって立体で再現しIoT化した各センサーや機器の数値を取り込むことで、作業者が現地を歩くことなくオペレーションが可能です。
メタバースはラインオペレーターの負担軽減にも役立ち、人材確保や作業環境の改善を目指すことができます。

疑似体験によるマーケティングショールームの拡充

製品プロモーションにもメタバースが活用できます。

製品を体験可能なメタバース空間の構築により、大きさや場所、距離の制約なく幅広い製品をクライアントに疑似体験してもらうことが可能となります。仮想空間で製品の仕様や大きさをクライアント体感してもらうことで、購入後の満足度の向上にもつながるでしょう。

メタバースを活用したショールームのイメージは以下の動画もご参考ください。

引用:FERRARI Virtual Showroom Experience / VR 360° Metaverse

製造業でのメタバース活用事例 10選

製造業におけるメタバースの導入事例10選を順番にご紹介します。

トヨタ自動車

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引用:バーチャルガレージ by TGR/LEXUS | 東京オートサロン | TOYOTA GAZOO Racing

トヨタ自動車は、「バーチャルガレージ」と題したメタバース空間での自動車展示をオートサロン2023にて提供しました。
現実世界の空間の広さに影響されずに展示車両の外観や内部、デモ映像を目の前にあるかのように見ることができるため、メタバースと自動車展示は好相性と言えます。
また、時間や混雑に影響されずに自動車を鑑賞できる点も、メタバースならではの強みです。

川崎重工

引用:Kawasaki Heavy Industries (Satya Nadella 2022 Build Keynote)

川崎重工は業務の属人化の予防と安定化のために、メタバース上でロボットとの共同作業を製造現場に導入しています。
メタバースによる製造ラインの監視は、設備トラブルの早期発見や予兆の把握、そしてベテラン作業者の知見をメタバースで繋がった全ての現場に適用できることがメリットです。
さらに開発、設計、試験をメタバース上で行うことは大幅なリードタイムの短縮につながり、効率的で安全な生産活動を可能とします。

引用:Kawasaki DXが「Microsoft Build 2022」で紹介されました | ニュース | 川崎重工業株式会社

大和ハウス

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引用:「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」開発|大和ハウス工業のリリース|会社情報 About Us

大和ハウスグループでは、事業関係者とのイメージ共有にメタバースを活用しています。
商業施設や事業施設などの建物の3次元モデルをメタバース空間として可視化させるメタバース技術を開発しました。

実寸大で外観や色味、隣接する建物との距離感をメタバース空間内で共有できるため、図面や仕様書よりも建設予定の建物を事業関係者に共有できます。

さらに、クライアントや事業関係者との打ち合わせをメタバース上の仮想空間で行うことも可能です。
メタバースによってお互いが遠方にいる場合にも、同じ部屋にいるように建物や内装に関する打ち合わせができるため、建築事前検討の時短が期待できます。

キッコーマン食品

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引用:キッコーマン、しょうゆの伝統的製法を継承する「御用蔵」をマーターポートのデジタルツイン技術で再現 | IoT NEWS

キッコーマン食品は、伝統的製法でしょうゆを製造する、御用醤油醸造所のデジタルツインを構築し、見学や製造作業に活用しています。
醸造所内をスキャナ撮影・画像編集を行うことでデジタルツインを構築し、御用蔵の全体像を立体的に俯瞰するドールハウス、平面図、ウォークスルーを構築しました。これにより、業務上の都合で通常は立ち入ることのできない仕込室の内部などをオンライン上で細部まで見学することができます。
また、デジタルツイン上にはテキストや資料、動画といったコンテンツを埋め込むことが可能です。伝統や食文化を発信する学びのコンテンツとしても利用できるだけでなく、現場の修繕やメンテナンスの内容を関係各所と共有にも利用できます。
一般顧客へのサービスから関係者への情報共有まで、幅広く活用できることがデジタルツインの特徴です。

大成建設

引用:【大成建設】次世代の業務スタイルへの変革を推進する「建設承認メタバース」の開発に着手

大成建設は、建築物の意匠・構造・設備などのデジタルデータを基に、クラウド上に建築物のメタバースを構築、関係者と共有することで建築における意思決定である「建設承認」を得るシステムを開発しました。

メタバース上でのクライアントへの説明や仕様の決定といった承認過程に加えて、設計者や施工者など関係者間での合意形成やさまざまなデータ、議事録などあらゆる情報を一元管理することで、施工現場における業務の効率化や働き方改革を目指しています。

建築プロジェクトにおいては、手戻りや工程の再調整が業務の効率化を図る上でネックとなりがちですが、メタバースの活用によってこれら課題の解決が期待できます。

引用:次世代の業務スタイルへの変革を推進する「建設承認メタバース™」の開発に着手 | 大成建設株式会社

パナソニック

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引用:メタバースでレッツノート工場の見学会を開催ー 全国の高校生向け「未来の教室」に協力しました ー|パナソニック コネクト

パナソニックは、メタバース空間によるオンライン工場見学会を実施しました。
周囲360度を見渡せる空間で実装~組立までの各工程の現場を、説明を聞きながら見学することができるのはメタバースならではの強みです。
現地にいるような臨場感のある体験ができるため、見学者の満足度向上が期待できます。
「見る」だけではなく「体験する」ことができるのが、メタバースの特徴です。

武田薬品工業

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引用:タケダ初「アバターの交流」で育む、社内コミュニケーション| DX INSIGHTS Vol.01

武田薬品工業は、メタバースを使った社内交流会を組織横断的に開催しました。
企業において異なる部署や部門の同僚とは活発な意見交換が行われにくい傾向がありますが、メタバース内でアバターを介することで臨場感のあるコミュニケーションが期待できます。
その理由は、オンライン会議では参加者全員でひとつのオーディオを共有するのに対し、メタバースでは、バーチャルでありながらもリアルに近い状況での会話が個別に行えるためです。

また、メタバースであれば会場設営のための工数や費用が抑えられるため、社内交流会を行うとしても参加者の移動や宿泊の負担がありません。
メタバースは、社内交流会をはじめとするコミュニケーションの場としても活用できます。

BMW

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引用:NVIDIA と BMW、現実世界と仮想世界が融合された未来の工場を実演

BMWは作業者の負担軽減を目的に、製造ラインにデジタルツインとロボットによる共同作業プラットフォームを導入しています。
工場の設計やロボット配置を3Dモデルで検討できるだけでなく、工程や作業の変更点もリアルタイムで可視化されるため、作業者の負荷は大幅に削減されます。

作業者は複雑な製造工程をリアルタイムで監視して、工場内のロボットに指示を与えることで製造ラインを稼働させています。
設備トラブルの発生時も作業者がソフトウェアの更新などでロボットを遠隔操作することで問題を解消し、元の工程に復帰させることができます。

メタバースとロボットの組み合わせにより、製造業にさらなる柔軟で正確な生産性と効率化が期待できるでしょう。

日産自動車

引用:【メタバース】Walk-Through

日産自動車は、一般顧客へ向けてメタバース上でクルマ選びを体験できるサービスを開発しました。
店舗に訪れることなく自宅でクルマ選びを体感できるため、グレードやカラーなどを変更したクルマをメタバース上で好きな角度から閲覧できます。

また、メタバース上ではカスタマイズしたクルマの走行を体験することも可能であり、臨場感のあるクルマ選びを実現します。
製品展示場やショールームはメタバースによって、より濃密な体験を提供することができるようになります。

引用:日産:NISSAN HYPE LAB

旭化成

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引用:旭化成における「デジタル×共創」 によるビジネス変革

旭化成はプロセス設備のデジタルツインにより、設備運転状況の最適化や保守保全の高度化と設備の遠隔監視を行っています。
また、現場における作業者の動きをデジタルで監視して作業姿勢や精神的負荷まで考慮した独自の指標を設けており、必要に応じて作業負荷を低減するなど、デジタルツインを活用するDXを積極的に取り入れています。
旭化成ではデジタルツインによるDXによって、業務の効率化やデジタル人材の強化を目指しています。

メタバース導入の課題やポイント

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製造業においてメリットの多いメタバースの導入ですが、導入においては事前に検討しなければならない以下のような課題やポイントがあります。

既存設備のメタバース化

製造の生産ラインへのメタバース導入には、まずは既存生産ラインのメタバースへの取り込みが必要です。
生産ラインのメタバース化には、画像や寸法、各センサー数値といった現状の設備データを取り込む必要があり初期費用がかかります。
またすでにIoT化を進めている場合には、データ収集に関する既存システムとの互換性など、メタバースと他システムとの整合性を事前に検討する必要もあります。

これらをクリアするためには、専門家による支援を活用するとスムーズでしょう。

製造ラインのメタバース化をご検討の際は、テクノプロ・デザイン社にご相談ください。
お客様の課題やご要望に合わせて全国30か所以上の拠点から7000人以上の経験豊富なエンジニアが強力にサポートします。

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運用コスト

メタバース化した生産ラインや製品検討用のメタバース空間の運用には、各センサーの数値処理を行うシステム維持費やメタバースのメンテナンスコストが発生します。

メタバースを導入する前に、具体的にメタバースをどのようなシーンで活用するのかを検討して費用対効果を算出し、メタバース化によってコスト的な恩恵も得られるように検討する必要があります。

メタバース人材

メタバースのシステム維持やメタバース内への各種データの取り込みなど、メタバース運用ノウハウのある人材がいなければ、継続的で効果的なメタバース活用が困難になります。

社内での研修会の実施やメタバース運用チームの設置、その他にもメーカーからの技術支援なども活用することで効率的にメタバースを運用できます。

製造業とメタバースの今後

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製造業においてメタバースの活用が期待されるシーンは多く、今後はさらに活用が進むと考えられています。
製造業におけるメタバースの発展について紹介します。

AIとメタバースの統合

メタバース上の仮想環境と、AIによる多彩なシミュレーションは非常に相性が良いと言えますが、一方で、現在の製造業ではそれらが十分に浸透しているわけではありません。今後製品開発におけるAIとメタバースの導入が進めば、さらに開発が加速することが期待されています。

また、複雑な生産工程におけるロボット制御のAI化も進めば、従来以上に効率的な生産が可能となり、安定した大量生産が実現できると予想されています。

メタバース規模の拡大

生産ラインの俯瞰的なオペレーションをさらに発展させ、他工場や他の現場とメタバースで繋がることで、オペレーターがさらに広範囲を管理することができるようになります。

また、他社との打合せや他業種との協業を行う際にも、共有メタバースを利用することでスピーディーで網羅的な検討が可能となり、従来では難しかった幅広い製品検討が可能になるでしょう。

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まとめ

製造業におけるメタバースの活用シーンや導入するメリット、導入事例について解説しました。
製造業のメタバース導入は、製品設計や製造現場における業務効率化だけではなく、顧客との製品イメージ共有や課題すべき解決の明確化にもつながるため、今後さらなる活用が期待されています。

自社の製造現場へのメタバース導入をご検討の際は、3Dモデルを活用したデジタルツインの導入や、シミュレーション環境の構築にも多くの実績があるテクノプロ・デザイン社へご相談ください。
それぞれの目的に合ったVR導入をご提案いたします。

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