ロボット

産業用ロボットとは?種類や使用例、導入メリットと課題、今後の予測

本記事では産業用ロボットの基本から種類、導入のメリットや課題、最新の市場動向までを徹底解説します。
製造現場で「生産性を向上させたい」「人手不足を解消したい」と悩んでいませんか?さらに、AIやデジタルツインといった最新技術を活用し、競争力を高める方法を模索している方も多いでしょう。この記事を読むことで産業用ロボットの導入に関する悩みや、自社に最適な活用方法を検討するヒントが得られます。

産業用ロボットをご検討の際は、産業用ロボットのメタバース連携や、シミュレーション環境の構築にも多くの実績があるテクノプロ・デザイン社へご相談ください。
それぞれの目的に合った産業用ロボットをご提案いたします。

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目次

産業用ロボットとは?

産業用ロボットは、製造現場でさまざまな作業の自動化や効率化のために設計された機械装置を指します。近年、製造業界では生産性向上や人手不足への対応が求められており、産業用ロボットはその解決策として注目されています。

JISや法律における産業用ロボットの定義

産業用ロボットは、日本産業規格(JIS)や法律で以下のように定義されています。

日本産業規格(JIS)
(JIS B0134)
・自動制御され,再プログラム可能で,多目的なマニピュレータ である
・3軸以上でプログラム可能である
・1か所に固定して又は移動機能をもつ
・産業自動化の用途に用いられる
労働安全衛生法・人間の代わりに作業を行う機械装置で、以下のような用途で、工場の自動化ライン等で使用されている。
○自動車などの溶接・塗装
○電気製品の組立
○部品の搬送 など。
・記憶装置の情報に基づき、人の腕に相当するマニプレータの伸縮、屈伸、上下・左右移動、旋回の動作を自動的に行うことができる機械。

産業用ロボットの導入には労働安全衛生法の遵守が必須で、産業用ロボットに関わる労働者に対して特別教育を行う義務があります。

産業用ロボットの構成例と動作の仕組み

産業用ロボットは、マニピュレータ」「ロボットコントローラ」「プログラミングペンダントの3つの要素で構成されています。

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マニピュレータ作業を行う腕に相当し、多関節構造やエンドエフェクタ(マニピュレータの先端に取り付けられる作業に応じたツール)によって多様な動作や作業に対応
ロボットコントローラ頭脳として動作を制御し、安全管理や他の機械との連携機能を備えている
プログラミングペンダントオペレーターがロボットを操作・監視する端末で、プログラミングや動作モニタリング、ティーチング機能が特徴

これらが連携することで高精度な作業を実現し、製造現場の効率化に貢献します。

産業用ロボットとサービスロボットとの違い

産業用ロボットとサービスロボットは以下のように用途設計思想使用環境技術に大きな違いがあります。

産業用ロボットの用途例サービスロボットの用途例
目的・特徴・製造現場での精密作業が目的
・高速かつ高精度な動作と堅牢性が特徴
・家庭や医療など人々の日常生活で使用
・安全性や柔軟性、対話能力が重視される
使用環境製造現場などの限られた環境で使用不確定な環境に適応しやすい
動作主に事前プログラムで動作AIを活用して柔軟な対応が可能
用途例・自動車製造ラインでの溶接作業
・電子部品の組立と検査
・食品加工業での搬送とパッケージング
・金属加工での切削・研磨作業
・飲食店での配膳作業
・商業施設での清掃作業
・オフィスビルでの警備
・ホテルでの受付
コスト高コストながら効率的な生産低コストで導入可能

産業用ロボットの種類と主な用途

産業用ロボットにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特性と用途を持っています。用途に応じたロボットを選択することで、製造現場の効率化や作業精度の向上が可能です。
ここでは、産業用ロボットの代表的な種類とそれぞれの特性や主な活用分野について解説します。

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垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、人間の腕のような動きを実現するロボットで、複数の回転軸を持ち、高い自由度と広い動作範囲が特徴です。

主な使用例は以下の通りです。

●自動車の溶接作業
●塗装
●組立作業

また柔軟な動作が可能なため、複雑な作業や異なる工程を一台でカバーすることができます。

水平多関節ロボット

水平多関節ロボットは、主に水平方向に動くロボットで、SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm)型としても知られています。

主な使用例は以下の通りです。

●電子部品の組立
●搬送作業
●食品の仕分け

軽量で設置が容易なため、省スペースな生産ラインでも導入しやすいこと、高速で正確な動作が可能である等の特徴があります。

パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットは、複数のアームが並列に動作する構造を持ち、高速かつ高精度な動作が可能です。

主な使用例は以下の通りです。

●ピッキング作業
●食品や医薬品の包装
●製品の品質管理
●検査工程

直交ロボット

直交ロボットは、X軸、Y軸、Z軸に沿った直線的な動きをするロボットです。
シンプルな構造でありながら高い堅牢性と耐久性を持っており、単純な直線動作を必要とする作業に適しています。また低コストで導入可能な点も魅力です。

主な使用例は以下の通りです。

●搬送
●パレタイジング(積み上げ作業)

協働ロボットとは?

協働ロボット(コボット)は、産業用ロボットの中でも特に人間と安全に共同作業を行えるよう設計されたロボットを指します。
従来の産業用ロボットは安全柵や防護措置の中で動作するのが一般的でしたが、協働ロボットは安全機能を強化することで、柵のない環境でも人と同じ作業空間で動作できる点が特徴です。
ここでは協働ロボットの基本的な特徴や利点、導入事例を解説します。これを通じて、協働ロボットがどのように製造現場の効率化や作業環境の改善に寄与しているかを理解しましょう。

協働ロボットの特徴

協働ロボットには以下のような特徴があります。

高い安全性能

協働ロボットは力覚センサーや衝突検知センサーを搭載し、人間との接触時に瞬時に動作を停止します。また柔軟性の高い素材を使用しているため、衝撃を吸収しやすい構造になっています。これにより安全柵が不要となり、限られたスペースでも効率的に活用可能です。

直感的な操作性

協働ロボットはプログラミングが容易である点が大きな利点です。プログラミングペンダントや直接操作によるティーチング機能を活用することで、専門的な知識がなくても比較的簡単に動作設定が行えます。最近ではAIを活用して自動的に最適な動作を提案する機能を持つモデルも登場しています。

柔軟な配置と用途

軽量設計やモジュール構造により、簡単に移動や再配置が可能です。これにより固定的な生産ラインだけでなく、変動する作業環境や多品種少量生産にも対応できます。

協働ロボットのメリット

協働ロボットを導入することで、以下のような利点が得られます。

生産性の向上人間とロボットがそれぞれの得意分野を分担することで、作業効率が大幅に向上します。
例えば繰り返し作業をロボットが行い、人間が創造的な業務に集中することが可能です。
コスト削減従来必要だった安全柵や複雑なプログラムの削減により、導入コストが抑えられます。
安全性と快適性の向上危険な作業をロボットが担うことで従業員の安全が確保され、作業環境が改善します。

協働ロボットの活用事例

協働ロボットは以下のようにさまざまな業界で利用されています。

自動車製造業エンジン部品の組立作業で、人間が部品を配置し、ロボットがトルクレンチで締め付け作業を行う
食品加工業食品のパッケージングや検品作業をロボットを活用して自動化し、人間が品質チェックを担当する
物流業界倉庫内での棚卸しやピッキング作業を効率化。ロボットが重量物を運搬し、人間が管理業務に注力する
電子部品製造業微細な部品の検査や組立作業で、ロボットが精密な動きを担当し、人間が結果をモニタリングする

協働ロボットの今後の展望

近年AIやセンサー技術の進化により、協働ロボットはさらに高い柔軟性と適応力を持つようになっています。

例えば作業環境や状況をリアルタイムで判断し、最適な動作を自主的に調整できるモデルが登場しています。またDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、協働ロボットをIoTやデジタルツインと連携させる取り組みも進んでいます。

これにより、より高度な生産性向上トレーサビリティの確保などが期待されています。

産業用ロボットを導入するメリットと課題

産業用ロボットの導入は製造現場の効率化や品質向上に大きく寄与しますが、その一方でコストや運用に関する課題も存在します。
ここでは導入による具体的なメリットと課題を詳しく解説し、課題を克服するための視点についても考察します。

メリット

産業用ロボットを導入すると、以下のようなメリットを享受できます。

生産効率の向上

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産業用ロボットは24時間稼働可能で、一定の速度で作業を繰り返すことができます。
これにより生産ライン全体の効率が向上し、人間の作業では実現が難しい高い生産性を得られます。
特に大量生産が求められる製造業では、その効果が顕著です。

品質の安定化

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ロボットは設定されたプログラムに基づき、精密な作業を正確に繰り返します

このため人間による作業では必ず発生するミスや品質のばらつきを抑えることが可能です。不良品の発生を減らし顧客満足度向上にもつながります。

人手不足の解消

少子高齢化や労働力の不足が進む中、産業用ロボットは貴重な代替手段となります。
特に人材確保が難しい単純作業危険な作業をロボットに任せることで、製造現場の労働力不足を補えます

作業環境の安全性向上

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高温、多粉塵、化学薬品等を扱う危険な作業環境では、産業用ロボットが人間の代わりに作業を行うことで、従業員の安全を確保できます。また事故防止や安全基準の遵守が容易になるため、職場全体の安全性が向上します。

課題

一方、産業用ロボットの導入には以下のような課題もあります。

高額な初期導入コスト

産業用ロボット本体の費用に加えて専用のインフラ整備プログラム開発調整作業が必要なため、それらの費用が特に中小企業にとって大きな負担となります。またロボットの種類や用途によっては、長期的な投資計画が求められます。

トレーニング費用と教育の必要性

産業用ロボットを安全かつ効率的に運用するためには、オペレーターや技術者への教育が必要です。

特に日本では「産業用ロボット特別教育」という法令に基づく教育が義務付けられており、ロボット操作や保守、安全に関する知識を学ぶ必要があります。
企業は教育費用や従業員の研修期間中の作業効率低下を考慮しなければなりません。

柔軟性の限界

産業用ロボットはプログラムされた作業を得意としますが、突発的な変更や多品種少量生産には対応しづらい場合があります。このため生産ラインの柔軟性を必要とする業界では、人間の作業を完全に代替するのは難しいことがあります。

従業員への影響

ロボット導入による効率化の一方で、「自分の仕事が奪われるのではないか」という従業員の不安抵抗感が発生することがあります。
この課題を解消するためには、従業員のスキル向上を支援する教育プログラムや、新しい役割を提供することが重要です。

課題を克服するためのポイント

産業用ロボットの導入メリットを最大限享受するために、以下のように課題に対して適切に対処することが重要です。

初期コストの管理

導入費用を抑えるため、補助金や税制優遇制度の活用を検討します。
また、ROI(投資利益率)の試算を事前に行い、投資の妥当性を確認することが重要です。

教育とサポートの充実

産業用ロボット特別教育を実施し、従業員が安全にロボットを操作できる体制を整えます。さらに外部の専門教育機関やメーカーのサポートを活用することで、教育コストを最小限に抑えることも可能です。

ロボットと人間の協調活用

ロボットが得意な作業はロボットに、柔軟性を必要とする作業は人間が担当するという形で、最適な協調体制を構築します。
このアプローチにより、効率化と従業員のモチベーション維持を両立できます。

産業用ロボットメーカー「4強」と世界シェア

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産業用ロボット市場では特定の主要メーカーが高いシェアを占め、グローバル規模での競争を繰り広げています。
ここでは世界を代表する「4強」と呼ばれる産業用ロボットメーカーの特徴や強み、最新の世界シェアについて解説します。

Kuka(ドイツ)

Kukaは2016年に中国の家電大手である美的集団によって買収された、ドイツを代表する産業用ロボットメーカーで、ドイツ自動車メーカーとの取引量が多い点が特徴です。
溶接、塗装、パレタイジングといった分野で高い技術力を有しています。
2023年の産業用ロボット業界の市場シェアでは、25.03%で世界第1位です。

ABB(スイス)

ABBはスイスを拠点とする重電・重工業の大手企業で、その名称はAsea Brown Boveri(アセア・ブラウン・ボベリ)を略したものです。1988年にスウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが統合して設立されました。
発電や送変電機器、自動化技術やソフトウェア分野で高い競争力を持っています。
2023年の産業用ロボット業界の市場シェアでは、17.47%で世界第2位です。

ファナック(日本)

ファナックは1972年創業の、日本を代表する産業ロボットやファクトリーオートメーションのリーディングカンパニーです。産業用ロボット分野で世界トップクラスの地位を確立しており、累積販売台数では世界最大規模とされています。
2023年の産業用ロボット業界の市場シェアでは、13.89%で世界第3位です。

安川電機(日本)

安川電機は、1915年創業のサーボモータとインバータの大手企業です。
産業用ロボットにも高い技術力を有しており、溶接から搬送まで幅広い用途に対応する産業用ロボットを取り扱っています。
2023年の産業用ロボット業界の市場シェアでは、8.56%で世界第5位です。

産業用ロボットの市場動向と今後の予測

産業用ロボットは製造業を中心に世界中で導入が進み、市場は急速に拡大しています。
特に2013年から2017年の5年間で世界の産業用ロボット販売台数は2倍に増加し、今後も年平均14%の成長が見込まれています。
ここでは世界や日本における動向や業界別の導入状況、今後の予測を解説します。

世界市場の動向

ロボットによる社会変革推進会議の「ロボットを取り巻く環境変化と今後の施策の方向性」では、ロボット産業の世界市場の動向は以下のようにまとめられています。

●世界の産業用ロボット販売台数は2013年から2017年の5年間で2倍に増加。今後も年平均 14%増見込み。 
●日本は世界一のロボット生産国。販売台数のシェアは90年代の9割程度よりは低下したものの、 世界のロボットの6割弱が日本メーカー製(約38万台中21万台)。
● 従来、自動車産業がロボットの最大の導入先。近年は、電機・エレクトロニクス産業でも増加。 他方、食品等の三品産業では導入が進まず。
● ロボットの導入台数を地域別にみると、中国の伸び率が他国を圧倒。 

引用:ロボットを取り巻く環境変化と今後の施策の方向性

日本製ロボットの市場動向

ロボットによる社会変革推進会議の「ロボットを取り巻く環境変化と今後の施策の方向性」では、ロボット産業における日本製ロボットの市場動向は以下のようにまとめられています。

●日本のロボットの導入密度(従業員10,000人当たりの導入台数)は、2012年から2017年にか けて、332台から308台へ推移しほぼ同数。順位については、2位から4位へ低下。
●日本製の産業用ロボットの総出荷台数のうち8割弱が国外向け(国外の3割以上が中国向け)。

引用:ロボットを取り巻く環境変化と今後の施策の方向性

業界別の導入状況

産業用ロボットの導入状況は業界ごとに異なり、自動車産業、電機・エレクトロニクス産業、三品産業(食品・医薬品・化粧品)が主要な分野です。

自動車産業溶接や塗装、組立作業で高い精度と効率を発揮している
電機・エレクトロニクス産業高精度が求められる基盤上の部品組立や検査、搬送作業に活用されている
三品産業衛生管理や品質維持が重要な場面で導入が進み、食品加工や医薬品製造、化粧品の包装などで利用されている

ほかにも、物流や建設業などでも需要が拡大しており、技術革新により多様な分野での活用がさらに広がる見込みです。

今後の予測

今後産業用ロボット市場は以下の要因によりさらなる成長が期待されています。

技術革新AIやIoTとの連携により、より高度な自動化や効率化が可能となります
人手不足の解消少子高齢化に伴う労働力不足を補う手段として、ロボットの需要が高まっています
新興国での需要増加特にアジア地域での経済成長に伴い、製造業の自動化ニーズが拡大しています

一方で導入コストや人材育成、システムインテグレーションの課題も存在します。これらの課題に対応するため、各国政府や企業は施策や投資を進めています。
例えば中国では「中国製造2025」などの政策を通じて、キーパーツの国産化やシステムインテグレーションの強化に取り組んでいます。

まとめ

産業用ロボットは自動車産業や電機産業をはじめとする多様な業界で活躍し、生産性向上や品質安定化、人手不足の解消に大きく寄与しています。一方で導入コストや専門知識の必要性、柔軟性の限界といった課題も存在します。しかしAIやIoTの活用が進む中で、産業用ロボットの需要はさらに高まっていくことが予想されます

産業用ロボットの導入を成功させるには、ロボットの適切な選定専門人材の育成が欠かせません。産業用ロボットをご検討の際は、産業用ロボットのメタバース連携や、シミュレーション環境の構築にも多くの実績があるテクノプロ・デザイン社へご相談ください。産業用ロボットの導入が未来の製造現場を切り拓く第一歩となるでしょう。

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