従来の組込みシステム開発からモデルベース開発(MBD)への移行、またはHILSなどの一部のプロセス変換が注目されています。今回の記事では、モデルベース開発の具体例を5つ厳選し、紹介します。自動車分野以外での導入事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
また、テクノプロ・デザイン社では多角的なモデルベース開発支援サービスを提供しています。要件定義からモデリングまでのシームレスな設計、モデルベース開発に関する人材育成やコンサルティング支援も可能です。お客様の課題に合わせたモデルベース開発支援をご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問合せ・ご相談下さい。
モデルベース開発の概要とメリット
ここでは、モデルベース開発の概要とそのメリットについて解説します。
モデルベース開発とは
モデルベース開発(Model Based Development)とは、制御システムの設計段階で、制御システムの仕様をモデルで表現し、そのモデルを使ってシミュレーションを行いながら設計・開発を進める手法です。モデルは数式などを用いて制御システムを構成する一部の機能を表現し、入力に対して出力を行うものです。
作成した制御モデルを基にコード生成も自動で行えるため、開発担当者は設計書を基に制御用のプログラムをコーディングする必要がなくなります。
市場のニーズにともなって複雑化するシステムやソフトウェア開発の各工程において、正確性や生産性の向上が期待できる手法としてモデルベース開発は注目されています。
モデルベース開発については以下の記事でも詳しく解説しています。
モデルベース開発のメリット
モデルベース開発を用いることで得られるメリットは、開発業務の効率化とコスト削減です。
従来の組込み開発では、実機を用いた検証と、不具合修正に伴う手戻りが何度も必要です。手戻り回数が増えれば、手戻りに伴う時間やコストが膨大になります。
モデルベース開発では、制御モデルとプラントモデルを用いてコンピュータ上で制御システムの動作検証をするため、設計段階でECUや実機の試作機が無い段階でも仕様の検証が可能です。不備や不具合を早期に発見することで、手戻りを減らし開発期間の短縮やコストを抑えられます。
また、制御システムを検証中に見つけた不備や不具合に対して、モデルをパソコン上で修正できます。モデルの自動コード作成機能を使うことで、プログラミングで生じるミスを防止できるでしょう。
開発の各工程で発生する作業時間の大幅な短縮に加えて、試作機の完成を待つことなく検証を開始できることから、コスト削減にもつながります。
また、作成したモデルは再利用や複製、改良が可能です。新製品開発や既存品の改良時、既存のモデルを再利用することで、設計工数を削減できます。モデルは企業の技術やノウハウにもなるため、蓄積できる財産としても活用できるでしょう。
モデルベース開発のメリットについては、以下の記事も参考にしてください。
モデルベース開発の具体例5選
既に自動車分野では多くの企業が導入しているモデルベース開発は、幅広い産業分野で導入が進められています。
さまざまな分野における、モデルベース開発導入企業の具体例について解説します。
テクノプロ・デザイン「自動車内のコントローラ間の連携不具合の早期発見」
引用:https://www.technopro.com/design/business_area/article/20210924-1180/
「テクノプロ・デザイン社」ではさまざまな企業・分野におけるモデルベース開発導入サポートやソリューションを提供しています。
この事例では、自動車内に組み込まれる既存コントローラ(ECU)モデルとプラント(車両)モデルと、新規開発するコントローラモデルとの連携を、ハードウェア試作前の仕様企画段階で検証したいものの、システム間を跨ぐ制御機能の検証効率化と品質向上のための形式検証技術の試行に課題がありました。
そこでテクノプロ・デザイン社が持つ技術やノウハウを用いて課題を解決。仕様検討~システムテスト完了までのコスト削減と、市場への不具合流出の減少による安全性の確保を実現しました。
dSPACE Japan「コンソーシアムの実証試験」
画像引用:https://www.dspace.com/ja/jpn/home.cfm
「dSPACE Japan」は、自動運転や電動化モビリティを実現する自動車産業向けからエネルギーストレージシステムやパワーグリッド等のエネルギー産業向けまで、さまざまな分野で発生する課題を解決するテクノロジーソリューションを提供するグローバル企業です。
dSPACE Japanでは、コンソーシアムでモデルベース開発の手法を導入する実証実験を行っています。
スマートエナジー研究所などのコンソーシアム運営団体とともに、福岡スマートハウスコンソーシアムや横浜スマートコミュニティなどでモデルベース開発を導入しました。
たとえば2013年4月に横浜スマートコミュニティの次世代型スマートハウスの研究・実験施設である「スマートセル」において、村田製作所と共同でモデルベース開発の手法を用いたエネルギー・システムの試作品(太陽電池や鉛蓄電池、系統電力、住宅内負荷との間での電力を制御するシステム)を発表。
すべての構成部分をモデル化することでシミュレーションで様々な検証が可能となり、非常に短い開発期間での仕上げに成功しています。
引用:日経クロステック
マツダ自動車「SKYACTIV テクノロジー搭載車比率拡大」
「マツダ自動車」では、エンジン、トランスミッション、シャシー、ボディといったすべての車の構造や制御システムを一新した「SKYACTIVEテクノロジー」を搭載したCX-5を2012年2月に発売。その後、同テクノロジーを搭載した車種を早いスピードで次々と発売することを実現しました。その背景にあるのがモデルベース開発の導入です。
マツダ自動車が開発フェーズで定義しているモデルの役割は以下の通りです。
・市場要求の把握モデル
・車両のシステム構想モデル
・ユニット・部品の詳細設計モデル
・制御開発モデル
・生産品質の開発モデル
一般的なモデルベース開発は標準化された開発プロセスをベースにし、それぞれの開発フェーズでモデルの役割を定義しますが、マツダ自動車ではV字プロセスの外にあるものをつなぐ役割としても、モデルを活用しているのが特徴です。
「MATLAB/Simulink」など、モデルベース開発のツールについては以下の記事を参考にしてください。
Manroland Sheetfed GmbH「高精度コントローラー開発」
画像引用:https://www.manrolandsheetfed.com/
プリンターや複合機といった印刷機器にもモデルベース開発が導入されています。
1871年にドイツで設立された歴史ある印刷システムメーカーである「Manroland Sheetfed GmbH」は、画像の鮮明さ、画像のページ内での正確な配置といった印刷の質をさらに向上させたいという市場ニーズに応えるためにモデルベース開発を採用しました。
コントローラーの設計、モデリング、リアルタイムシミュレーションの実行、量産システムへの実装に費やした開発期間を、数週間要した設計の繰り返し作業を数分に短縮することで、従来の開発手法と比較して開発期間全体の50%以上短縮するのに成功しました。
京セラドキュメントソリューションズ「定着ユニットの温度制御システム設計」
画像引用:https://www.kyoceradocumentsolutions.co.jp/
「京セラドキュメントソリューションズ株式会社」では、レーザー プリンターの定着ユニットの温度制御に「MATLAB/Simulink」を利用したモデルベース開発を導入しています。
モデルベース開発を適用したのは、開発における以下の部分です。
・定着ユニットの熱伝導を表すプラントモデルの設計
・ニップ部の温度制御性能の確保
・IH(Induction Heating)ヒーターの入力電力の抑制を実現する最適制御の設計
・部品のパラメーターのばらつきを考慮したモンテカルロシミュレーションによるニップ部の定着温度の解析
まとめ
さまざまな分野におけるモデルベース開発導入の具体例を紹介しました。
モデルベース開発は、そのメリットの大きさから自動車産業ではもちろんのこと、それ以外の製品開発・システム開発にも導入されつつあります。
モデルベース開発導入を検討しているなら、ぜひテクノプロ・デザイン社にご相談ください。HILS構築運用(ADAS/xEV/車体制御/EPS/シャーシ等)支援、SILS/MILS構築・運用(パワートレイン/ADAS/ⅹEV/ブレーキ等)支援、シミュレーション環境構築・運用(1DCAE/MILS/HILS)支援など、それぞれの企業のニーズに合ったモデルベース開発導入サポートの提供しています。また、MBD導入支援コンサルティングを行っています。
モデルベース開発への完全移行ではなく、一部の開発プロセスをHILSへ移行し、徐々にモデルベース開発へ移行することも可能です。お気軽にお問い合わせください。