シミュレーション

デジタルツインとシミュレーションの違いとは?メリットや構成技術

デジタルツイン シミュレーション4

AIやIoTなどの技術が発達し、製造業をはじめ多くの分野に導入されるようになった技術に「デジタルツイン」があります。本コラムでは、デジタルツインとシミュレーションの違いを踏まえ、デジタルツインがもたらすメリット、さらにデジタルツインを支える技術について解説します。

テクノプロ・デザイン社では、デジタルツインを活用したシミュレーション環境の構築人材の育成やコンサルティングなど幅広く支援しています。
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デジタルツイン シミュレーション3

目次

デジタルツインとは

デジタルツインは最新技術の飛躍により、製造業を中心に活用されている技術です。デジタルツインの概要を解説します。

デジタルツインとは

デジタルツイン シミュレーション5

デジタルツインとは、仮想空間に物理空間(現実の世界)を再現する技術です。英語では「Digital Twin」と表し、「デジタル空間の双子」と訳せます。
AIやIoT、VR、ARといった技術を活用し、物理空間にある情報およびデータを収集し、仮想空間にそのまま双子のように、構造や状況をそっくりに複製・再現できるのが特徴です。デジタルツインによって、仮想空間上で物理空間と同じような高度なモニタリング・シミュレーションを実現可能となりました。

デジタルツインが注目される背景

デジタルツインは近年著名になった技術ですが、1960年代からその概念は存在していました。近年はAIやIoTなどの技術が飛躍的に発展し、物理空間における解像度や再現性が大きく向上したことで実用化が進みました。
さらに、DXの推進との相乗効果もあり、デジタルツインの注目度が上がりました。

現在、デジタルツインは国内・海外の製造業はもちろん、行政などの幅広い分野にて活用されています。

デジタルツインについては以下の動画も参考にしてください。

引用:デジタルツインって何!?(仮想現実ですべてシミュレーションできる世界)

引用:もう一つの「現実世界」、デジタルツインとは ーバーチャルシンガポール・仮想工場なども紹介

デジタルツインとシミュレーションの違い

デジタルツイン シミュレーション7

シミュレーション技術のひとつとしてデジタルツインがありますが、従来のシミュレーション技術と比較すると大きく違います。
デジタルツインとシミュレーションの違いについて解説します。

リアルタイムで再現が可能

デジタルツインは、現実空間をリアルタイムで仮想空間に再現できることが大きな特徴です。IoTから集められたデータがリアルタイムでサーバーに送られ、AIが分析・処理します。こうして物理空間で発生した詳細な状況や事象まで仮想空間で再現します。デジタルツインは、物理空間の将来の変化までもシミュレーションでき、従来のシミュレーションと比較すると、迅速に高精度な結果を得られるでしょう。

空間の規模や費用の制約がない

従来のシミュレーションは実験場などで実行されますが、デジタルツインは仮想空間上でシミュレーションを行います。
物理空間で行う場合、人の手や専用の機器などが必要です。一方、仮想空間上では物理空間のように実際の機器は不要であるため、規模や費用といった制約を受けず、規模の大きな実験や危険をともなう実験、高コストな実験なども実施可能です。
また、幅広いシミュレーションを行えるため、従来のような評価や検証を目的としたシミュレーションだけでなく、新事業開拓やビジネスの発掘などの用途でのシミュレーションにも活用可能です。

現実に即したシミュレーションが可能

デジタルツインは、現実空間でのリアルタイム情報を連動させたシミュレーション技術です。
従来のシミュレーションは、できる限り想定できるシナリオを元に仕様を設計し、実験や検証を行います。デジタルツインは、現実空間で実際に発生している事象による情報やデータを元にしたシミュレーションができるため、より現実的に即したシミュレーションが実現できます。

可能性や将来性を共有できる

デジタルツインは、現実空間で発生する可能性がある事象を、仮想空間上でリアルタイムに予測できます。将来予測はネットワークを介して共有されているので、起きる可能性や将来に対して、現実空間への具体的かつ共有可能なアプローチが可能です。
たとえば今後発生するかもしれない問題もデジタルツインの活用で予防できます。リアルタイム性のない従来のシミュレーションよりも、デジタルツインのほうが可能性や将来性を共有できる期待が高いと言えるでしょう。

補足:デジタルツインとメタバースの違い

デジタルツイン シミュレーション6

仮想空間上で構築されるサービスに「メタバース」があります。
デジタルツインとメタバースの違いは、目的です。デジタルツインは仮想空間内で、さまざまなシミュレーションを実現する「模擬実験」が目的であるのに対して、メタバースは仮想空間内で、コミュニケーションや経済活動といった「体験」が目的です。そのため、デジタルツインは物理空間を仮想空間上に忠実に再現するのに対して、メタバースは物理空間にあるもの、ないものが混在しています。
メタバースではアバターを使ってコミュニケーションや経済活動を行う、といった違いもあります。

【参考記事】以下の記事では生産シミュレーションについて解説しています。

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デジタルツインがもたらすメリット

デジタルツイン シミュレーション2

デジタルツインには多くのメリットがあります。デジタルツインによってもたらされる、具体的なメリットを解説します。

生産性の向上

デジタルツインは、現場の稼働状況などのデータをリアルタイムで収集・分析し、最適な人員配置やスケジュールなどをシミュレーションできます。閑散期・繁忙期などの需要変化に応じたシミュレーションもできるため、全体的な生産性の向上や業務効率化が期待できます。

品質向上

デジタルツインの仮想空間は物理的な制限がないため、実験や検証を何度でも実行できます。従来のシミュレーションや実験よりも細かな欠陥や改善点を発見できるため、製品の品質の向上につながるでしょう。

安全性の向上

デジタルツインでは、製造ラインの稼働状況、人員配置などもシミュレーションできるため、事故のリスクも低減できます。仮想空間で怪我や事故についてのシミュレーションを行っておけば、製造工程全体の安全性の向上にも寄与します。

コストダウン

デジタルツインによるシミュレーションは、試作品製造や実験をともなう物理空間で行うシミュレーションよりもコストを抑えられます。さらにデジタルツインで生産ラインや業務プロセスを最適化することで、時間や人員、費用といったコストも大幅に削減できるでしょう。

リードタイムの短縮

デジタルツインによって製造工程を把握すれば、リアルタイムで改善点を発見し、すぐに対応できるため効率アップします。生産管理を最適化することで業務効率の向上やリードタイム短縮も期待できます。

トラブルの事前検知や防止による保守保全

デジタルツインでは、設計上のミス、予期せぬエラーや不具合などについて詳細なデータを取得可能なため、リアルタイムでトラブルを検知できるようになります。従来の生産設備での不具合やトラブル発生時、現場からのレポートなどをもとに原因を調査して解決していました。デジタルツインによって、より迅速な原因の特定と解決が可能となります。

さらに、稼働状況などのデータを分析したシミュレーションを実行することで、今後発生が予測されるトラブルを事前に察知し、アラートを鳴らすなどで予防保全も可能です。設備保全の質の向上にもつながります。

顧客満足度の向上

デジタルツインは、出荷後の製品のモニタリングも可能なため、顧客にとって最適なタイミングでアフターサービスやサポートを行えます。たとえば出荷した製品にセンサーを取り付けてデジタルツインで使用状況をリアルタイムで確認することで、バッテリーや部品などの消耗状況を把握し、最適なタイミングで顧客へアプローチできるでしょう。
実際の使用状況のデータは、今後の商品開発やマーケティング施策にも活用できます。適切なタイミングでのアプローチを行うことで、顧客満足度の向上も期待できます。

デジタルツインを支える技術

デジタルツイン シミュレーション1

ここではデジタルツインを支えているさまざまな技術を紹介します。

3Dマッピング

3Dモデリング・3Dスキャンなどで現実空間をより忠実に仮想空間に再現する技術です。デジタルツインでは工場や街などからリアルタイムに情報収集しシミュレーションするため仮想空間構築は重要な技術になります。

自己位置推定

自己位置推定技術とは、自分がどこにいるのか、周辺環境はどのようなものなのかをリアルタイムに判断する技術です。自己位置認識にはSLAMとVPSのいずれかの技術が用いられ、SLAMとVPSにはメリット・デメリットが存在し、どちらの技術を採用するかに、各社の戦略が現れています。 

IoT

IoTとは「Internet of Things」の略。あらゆるモノがインターネットにより通信を行える技術です。デジタルツインでは、機器に搭載されたセンサーをはじめとしたIoT技術が物理空間上のデータをリアルタイムで収集し、インターネットを介して仮想空間を構築しています。

AI

AIは「Artificial Intelligence」の略で、学習能力を持ち、人間の知能を再現できる技術です。デジタルツインでは大容量のデータを高精度で分析できることに加えて、将来予測もAIが可能としています。

5G

5Gとは第5世代移動通信システム(5th Generation)で、従来と比較し、大容量のデータを超高速・超低遅延で送受信できる技術です。デジタルツインにおける、データをリアルタイムで仮想空間へ反映させるには、次世代通信技術である5Gが必要不可欠です。

VR・AR

VRとは「Virtual Reality」の略で、仮想空間を現実の世界のように再現する技術です。ARとは「Augmented Reality」のことで、現実世界にデジタル情報を加える技術を指します。デジタルツインの仮想空間における高い再現性は、VRやARが支えていると言えます。

CAE

CAEとは「Computer Aided Engineering」の略で、コンピュータを活用して製品を設計したり、シミュレーションを行ったりします。デジタルツインにおけるシミュレーションでは、CAEが使用されています。

まとめ

デジタルツインの概要やシミュレーションとの違い、デジタルツインを導入するメリット、デジタルツインを実現している技術について解説しました。デジタルツインによって、従来のシミュレーションでは不可能だったリアルタイムでの情報収集と将来予測が可能となりました。

テクノプロ・デザイン社では、デジタルツインを活用したシミュレーション環境の構築、人材の育成やコンサルティングなど幅広く支援しています。
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