シミュレーション

生産シミュレーションとは?機能や従来のエクセル管理との比較

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製造業の生産システム上で発生するさまざまな課題解決のために、生産シミュレーションが導入されています。今回の記事では、生産シミュレーションの重要性や機能、解決できる課題について解説します。生産シミュレーターとエクセルとの比較についても紹介していますので、これから生産シミュレーターの導入を検討している方は、参考にしてください。

また、モノづくりからIT産業まで幅広いテクノロジーに秀でた7000人以上のエンジニアを有するテクノプロ・デザイン社は、生産シミュレーションの導入支援も全国規模で行っています。ぜひご相談ください。

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目次

生産シミュレーションとは?その重要性

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シミュレーションとは、コンピューター上で実機を使わず、モデルを使って実機のふるまいを予測することを指します。製造業では製造工程でモデルを使ったモデルベース開発(MBD)の導入が進んでいますが、生産システム上での生産シミュレーションも導入される機会が多くなりました。
生産シミュレーションが重要視されている背景を解説します。

生産シミュレーションとは

生産シミュレーションとは、生産プロセスおよびプロセスにて使用される人や設備といったリソースをモデル化し、デジタル空間上で再現する手法です。生産シミュレーションにより実際の生産プロセスで発生する生産見込みや出来高、ロス、コストやリードタイムなどをあらかじめ把握できるため、生産計画の立案や生産工程の最適化につなげられます。

生産シミュレーションの重要性

生産システムの複雑化・高度化への対応

市場ニーズの多様化や変化のスピードが高くなっていることで、製造業でも従来の大量生産に加えて、多品種の取り扱い、少量生産などへの対応も求められています。さらに生産工程の最適化・効率化のために作業用ロボットや協働ロボット、AIなどを活用して工程の自動化も進んでいます。
これらの要因が複雑に絡み、生産システムそのものが複雑化・高度化しています。

従来の需要変動見込みや生産予測が立てられないケースも増加しています。そこで市場のニーズの予測や分析に生産シミュレーションを用いることで、生産における不確実性を低減できるでしょう。

設計段階での問題発見と可視化

工場の「レイアウト設計」や、生産ラインの「工程設計」は、稼動することで人・資源・時間などの制約がかかるため、設計段階ではなかった問題が発生することが少なくありません。設計段階では予測できなかった問題が発生することで、稼働率に影響が出て生産性が低下する原因ともなります。
生産シミュレーションを用いると、設計段階では見えない人や時間、資源といった資源や制限を可視化できるため、発生する問題を予測、除去したうえで設計ができます。

ベテラン技術者のノウハウ継承

少子高齢化が進む日本では、製造業を含め多くの産業で団塊の世代の大量退職が進んでいます。厚生労働省の発表した「令和4年雇用動向調査結果」によれば、製造業での令和3年度の入職者は664.8万人、退職者は786.1万人、令和4年度の入職者は739.0万人、離職者は788.8万人と、いずれも退職者が入職者を上回る結果が出ています。

製造業の生産工程でも、ベテランの技術者が大量に引退することで、ベテラン技術者の持つ勘や経験、技術やノウハウに頼ってきた生産計画立案や管理、生産設計などの各工程への対応が難しくなってきました。そこでベテランの持つ勘や経験に頼ってきた部分を生産シミュレーションによる予測や分析で補い、生産計画や設計の最適化につなげることが求められています。

生産シミュレーションについて、以下の動画も参考にしてください。

引用:【生産シミュレーション】誰もがゲームのようにパパッと「最適な生産・段取りがわかる」神ソフト!若手や新人こそ知っておきたいシミュレーション技術とは【最適化】【デジタルツイン】

引用:【事例】生産計画シミュレーション(魚宗フーズ)

【参考記事】以下の記事ではデジタルツインとシミュレーションについて解説しています。

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生産シミュレーションで実現できること

生産 シミュレーション5

生産シミュレーションを導入することで、生産工程における業務効率化や課題の解決につながります。ここでは生産シミュレーションによって実現できることを解説します。

動的シミュレーションによる予測分析

シミュレーションには、静止した対象物への静的シミュレーションと、常に動いている、時間的に変化する対象物への動的シミュレーションの2種類があります。生産現場における生産シミュレーションは、対象物とはワークの動きとなるため動的シミュレーションに該当します。

動的シミュレーションでは、動的に発生する停止についてのシミュレーションも可能です。たとえば生産現場における搬送キャリアの計画的な停止は「停止」に該当しますが、稼動している搬送キャリアが渋滞や停電などのトラブルにより停止した場合は「動的に発生する停止」に該当します。
動的に発生する停止については、従来のエクセルを使った生産シミュレーションでは予測・分析ができません。生産シミュレーションは、不確実性のある動的に発生する停止についての予測や分析も実現します。

待ち行列システムの最適化

製造業における工程または作業を待ち行列としてみなす考え方を「待ち行列システム」と呼びます。たとえば、工場で行う部品加工の生産工程を分解し、部品を人と見立てると「作業現場に到着する」「加工されるのを待つ」「順番が来たので加工される」「次の工程に進む順番を待つ」「次の作業現場に到着する(先頭に戻る)」となります。待ち行列システムにおける部材待ち、人待ち、指示待ちなどの滞留時間の予測は困難でしたが、生産シミュレーションを用いることで、滞留時間の可視化ができ、計算できるようになりました。

待ち行列システムでは、流入量と待ち時間に直接的な比例関係はありません(待ち行列理論)。たとえば流入量が40%増えたからと言って、待ち時間が単純に40%増加する、ということはないと言えます。
そのため、勘や経験に頼った待ち行列理論を使って生産工程やラインの設計をすると、発生するリスクなどを考慮した結果無駄な投資となってしまうことがあります。たとえば、勘に頼って人員を増やしたところ生産量に変動はなく、コストのみかかってしまった、ということもあるでしょう。
生産シミュレーションでは滞留時間の可視化と計算ができるため、定量的な予測につながり、生産工程やライン設計の最適化にもつながります。

生産ラインやスケジュールの新設・改善への流用

生産シミュレーションでは、実機ではなくコンピューター上でモデルを対象物として計算、予測、分析を行います。このとき使用したモデルは、生産ラインやスケジュールの新設や改善への流用が可能です。

たとえば生産ラインの改善のためのPDCAサイクルは以下のようになります。

P工程設計の前に生産性、リードタイム、段取り率、直行率や稼動率といったKPIの目標値を決めて
D工程設計を行って生産を開始し
C実績のKPIと目標のKPIの差をチェックし
A実績と目標のギャップを埋めるための改善を行う

このとき、PとDの前に生産シミュレーションを行うことで、ある程度の実績KPIの予測が可能です。結果Cで発生する実績KPIと目標KPIのギャップが小さくなるため、PDCAサイクルの高速化にもつなげられるでしょう。

生産ラインの改善のほか、ラインやスケジュールを新設したいときにも生産シミュレーションで使用したモデルを流用することで、設計や計画立案の効率化や最適化が実現します。

在庫管理の最適化

生産シミュレーションでは、在庫管理の最適化もできます。生産シミュレーションによって市場のニーズの多様化や変動への予測分析ができるようになるため、適切な生産計画の立案も可能です。結果余剰在庫や欠品を出すリスクも減らせるため、在庫管理で発生する人的コストや管理の負担、余剰在庫による品質の低下や欠品による販売機会の損失といったリスクも減らせるでしょう。

生産シミュレーションと従来のエクセルでの管理の比較

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すでに生産設計のレイアウトや計画立案といった生産管理業務にExcel(エクセル)シートを活用している現場も多いでしょう。
しかし従来のエクセルでは、動的に発生する停止の予測はできません。また、産業用ロボットや協働ロボット、AIなどによって自動化された生産工程については、エクセル上での管理は不可能です。

また、生産シミュレーションはグラフィック機能が追加されたことで視認性が上がり、直感的な作業が可能となりました。かつてシミュレーションを行う際にはコンピューター言語を駆使する必要がありましたが、グラフィック機能によってその制約はなくなりました。イメージを直感的にコンピューターに伝えられるようになっただけでなく、計算結果も数字の羅列からグラフなどでビジュアル化され、分析結果をより明確に把握できるようになりました。
コンピューター言語などの専門的なスキルや知識不要で使用でき、直感的な操作もできるため生産シミュレーションは、エクセルよりも幅広い生産現場での活用が期待できるでしょう。

まとめ

生産シミュレーションの重要性や実現可能なこと、生産シミュレーションと従来のエクセルでの管理の比較を解説しました。生産シミュレーションを取り入れることで、生産工程における課題の解決や業務効率化といった多くのメリットが得られます。

テクノプロ・デザイン社は、モノづくりからIT産業まで幅広いテクノロジーに秀でたエンジニアを7000人以上有し、日本全国に展開している拠点から、確実なソリューションを迅速に提供します。生産シミュレーションの導入検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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