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流体解析(CFD)の基礎|シミュレーションや構成要素、メリット

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製造業をはじめとした多様な産業で取り入れられている技術に「流体力学」があります。流体力学は日常生活から経済活動まであらゆるものに応用されています。
今回の記事では、流体解析の対象となる流体の種類や概要に加えて、流体解析の構成要素、メリット、実行手順を解説します。

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目次

流体解析(CFD)とは

流体解析(CFD)とCFDシミュレーションの概要とともに、流体、流体力学の概要を解説します。

流体とは

流体とは、自由に形を変えながら流れていく、連続体として扱い可能なものの総称です。
物質の三態(固体・気体・液体)のうち、空気などの気体・水などの液体が流体と呼ばれます。

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流体力学とは

流体力学とは、気体や液体の流れなど流体の動きについての学問です。
流体の性質を数式に置き換え、物理学的に、数学的に記述します。「機械力学」「熱力学」「材料力学」とともに、機械工学における4力学に含まれます。

流体力学は、以下のような分野に応用されています。
・水道やガスなどの液体エネルギー
・火力発電、水力発電などの流体エネルギー変換のインフラ領域
・室内における空調使用時の気流解析
・械の冷却装置の気流解析
・天気予報での風向きや気圧の解析 など

流体解析

流体力学は以下のような分野に分かれます。

数値流体力学流体力学の技術や工学知識とコンピュータによって分析
実験流体力学実験を主体に流体を研究
理論流体力学理論を主体に研究

数値流体力学は英語で「Computational Fluid Dynamics(CFD)」と訳され、流体解析は、一般的に数値流体力学のことを指します。

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流体解析はコンピューター上で流体の動きを分析、明確にできるため、試作品不要で多種多様なシミュレーションが可能です。たとえば自動車や航空機などの空気抵抗の計算や、配管内に流れる水やガスの計算といった技術分野に、流体解析が用いられています。

CFDシミュレーションとは

CFDシミュレーションでは、流体力学を活用し、物体の動きや性質、物質輸送、物理的な問題を物理的・数学的にモデリングします。流体動作の温度や応力、速度と密度を色で表し、設計や解析に応用されています。

CFDシミュレーションは流体の運動を論理と物理を用いて解析できるため、製品設計における有効な手段と言えます。

流体解析については、以下の動画も参考にしてください。

引用:スーパーコンピュータを活用した自動車の空気力学シミュレーション

引用:【よくわかる流体解析】流体解析について

【参考記事】以下の記事では構造解析について解説しています。

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流体解析の構成要素

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流体解析の構成要素を解説します。

コンピューター

流体解析はコンピューターによって計算を実行します。流体解析に十分なコンピューターのスペックは、解析の対象・現象、ソフトウェアなどによって左右されます。特に大規模な計算を実施する場合には、CPUやメモリの増設や、専用の計算サーバーの構築が求められることがあります。

メッシュ(前処理)

コンピューターで数値解析を行なうためには、まずコンピュータ上に解析対象物を再現し、解析領域をメッシュ(別名グリッド、格子、セルなど。「小空間」の意。)に分割します。

プログラム(ソルバー処理)

流体解析は、流体の基礎方程式を数値的に解き、解析を行います。そのためのプログラムが必要です。「ソルバー」とは、収集したデータによって計算するソフトウェアの中核となる部分です。前の処理で最適化されたデータを、CFDシミュレーションのソルバーによって数式の解を導くのが「ソルバー処理」です。

ソルバー処理では、膨大で複雑なデータを処理する必要があるため、多くの時間と多くの演算リソースが不可欠です。そのため自社サーバーでのシステム構築ではなく、クラウド型のシステムを選択する企業が多い傾向にあります。

解析条件設定

解析したい流体の流れを仮定して計算するのが解析条件設定です。解析条件設定では、以下の解析手法を選択して行います。
・時間経過を考慮するかどうか
・流体の性質をどのように扱うか(例:ニュートン流体・非ニュートン流体など)
・流れの扱いはどうするか(例:層流・乱流など)
・固体の熱・音響・気液混合まで扱うか

上記を決定したら、CFDプログラムに入力します。さらに、計算する領域の周囲に境界条件を設定する必要があります。

結果処理(後処理)

解析設定を演算処理した結果として得られたデータを可視化する処理です。
たとえば速度ベクトル図を使って、流れの方向や大きさを明確に表示します。流れの方向を矢印で表示し、矢印の色や長さによって速度の大きさを表現することも可能です。

速度ベクトル図は、「流線」で表示することで3次元的な流れも視覚化可能です。流線は、仮想粒子(質量、体積を持たないと仮定された粒子)と呼ばれる粒子の軌跡を表したものです。解析領域の中で同じ値をつなぐと、等値面と呼ばれる3次元の面ができます。等値面から、圧力や温度などの分布を確認できます。

一般的に以下の機能がパッケージ化されたソフトウェアはプロ・ポストソフトウェアと呼ばれています。
・3次元のCADデータ読み込み機能
・流体空間を定義する機能
・メッシュを生成する機能
・境界条件を設定する機能
・結果を処理する機能 など

計算を実行するソフトウェアは、ソルバーと呼ばれています。汎用的な熱流体解析ソフトには、以下の機能がパッケージ化されています。
・メッシュ生成ツール
・計算のためのソルバー
・結果処理ツール

ソルバーでは、オープンソースソフトウェア(Open Source Software:OSS)や、自作のプログラムなども使用可能です。

流体解析のメリット

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流体解析を活用することで得られるメリットを解説します。

試作品なしで信頼性の高いデータを取得できる

流体解析で得られる情報と結果は実現象そのものを表すため、試作品なしで信頼性の高いデータを取得できることがメリットです。
試作品が不要であるため、実機を制作する場合に発生する時間やコストの削減につながり、開発期間の短縮にも有効でしょう。
流体力学とコンピュータを組み合わせているCFDを活用すれば、プログラム上で何度でも繰り返しシミュレーションを実行する事も可能です。

実験・計測が難しい流体運動も解析できる

複雑な流体運動は、実験・計測が困難です。特に、複雑な実験であるほど試作の設計変更を何度も繰り返す必要性が出てくるなど、膨大な負担につながりやすいです。
試作品や実物を用いた実験をCFDシミュレーションに置き換えることで、実験や計測が難しい流体運動でもコンピュータ上でより簡単に、繰り返しの検証が可能になります。

流体解析の注意点

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流体解析から得られるメリットは非常に大きい一方で、注意点もあります。
ここでは流体解析における注意点を説明します。

形状を正確にモデル化する

モデルの誤差が大きければ、解析結果の精度に大きく影響する可能性があります。シミュレーション上の誤差はわずかであっても、精密性が高い製品であれば、検証後の設計にて致命的な問題となることもあるでしょう。場合によっては大きな手戻りが発生し、工期にも影響を与えます。

数値計算を適切に設定する

解析目的に合った設定にすることはもちろんですが、精度と計算量のバランスを考慮することも大切です。

解析内容の複雑さに合った計算機を使用する

流体解析は膨大な量のデータ処理を実行するため、ハードウェアとソフトウェアの両方に高いスペックが求められます。

十分な経験のある人材が必要

正確な解析を行うためには、十分な経験が不可欠です。人材育成のための研修・教育制度の整備を検討する必要もあります。
まずは支援サービスの利用から始めるのもおすすめです。

まとめ

流体解析の概要とともに、流体解析の構成要素、導入メリット、導入時の注意点を解説しました。流体解析を導入することで、実現象と同じデータや結果を取得でき、試作品に発生する工期やコストの削減、複雑な流体の解析も実現します。

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