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PLMとは?PDMとの違いやおもな機能、導入するメリットを解説

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労働人口の減少や社会情勢の変化、市場ニーズの多様化など製造業の周辺環境が複雑化しています。今後製造業が企業としての競争力や優位性を保つための新しい手法として注目されているのが「PLM」です。今回の記事ではPLMの概要や重視される背景にある重要性、おもな機能や導入するメリット等を解説します。

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目次

PLMとは?PDMとの違い

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ここではPLMの概要と、似ている概念であるPDMとの違いを解説します。

PLMとは

PLMとは「Product Lifecycle Management」の略で、製造業にて自社製品のライフサイクル全体を一元管理する手法を指します。製品ライフサイクルとは企画から設計開発、製造、販売、保守までを指します。

PLMは航空や宇宙産業分野や自動車産業からの導入が開始されましたが、近年ではその他の多様な製造分野に普及しています。

PDMとの違い

PLMと似た製品情報管理手法に、PDMがあります。PDMとは「Product Data Management」の略で、開発・設計工程での設計データを対象に管理します。PLMがライフサイクル全体を対象としているのに対して、PDMでは、設計情報やCADデータなどに限っています。PLMはPDMを包括しているのです。

PDMは開発や設計業務の効率化や生産までのリードタイム短縮、コストカットを目的に活用されていました。2000年代より、グローバル化や消費者ニーズの多様化に対応するために、開発・設計部門だけでなく、より広範囲の工程を管理できる機能がPDMに搭載され、「PLM」として拡大していきました。

PMLについて、以下の動画も参考にしてください。

引用:製品ライフサイクル管理(PLM)とは何か

引用:PLMを用いた精密農業を実践されている方へのインタビュー #1

PLMが重視される背景

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PLMが近年重視されるようになった背景について解説します。

製造業を取り巻く環境の変化

消費者のニーズの多様化、短期間での市場のトレンドの変化、製品ライフサイクルの短縮、SDGsへの対応、コンプライアンス重視など、製造業を取り巻く環境は日々変化しています。
従来の紙やExcelによる管理ではスピードの速い市場環境の変化や、コンプライアンス遵守の厳格化に対応できません。そこでPLMによるデータの共有管理が求められています。

情報のデジタル・データベース化

IT技術の進歩により、ITの知識やノウハウのない人材でもかんたんに取り扱い可能なシステムやツールが多く誕生しました。製造業でもデジタル化やデータベース化が推進され、製品ライフサイクル全体のデータをかんたんに取得、管理できるようになっています。今まで紙やExcelで管理していた技術データをまとめて、製品ライフサイクル全体を集約しデジタル化、データベース化し、一元管理をするにはPLMが必要です。

企業の競争力の向上

近年グローバルな競争が激化しており、日本企業や中小企業は、より良い製品を低コストかつスピーディに投入できる能力が求められています。
PLMは、一元管理されたデータの分析や共有によって製品の改善・改良に活かすなど、企業の競争力を高めるためにも重要です。

製造DXへの対応

社内の業務プロセス改善や、仕組み・制度改革を進める製造DXが拡大しています。たとえばセンサーやロボット、AIなどのさまざまな技術を活用し、製造現場の自動化や無人化も進められています。

製造DXの推進においても、PLMが基盤となります。自動化や無人化した現場で収集されたデータが、PLMによって各部門へ共有され、問題発生時の解決や生産工程の最適化に活用されます。

PLMのおもな機能

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PLMには、製品ライフサイクルの各工程で必要となるさまざまな機能が搭載されています。PLMが持つ、おもな機能を順に解説します。

データ管理機能

PDMによって以下の設計に関するデータ管理が可能です。

CAD

CADとは、「Computer Aided Design」の略で、従来手書きで行っていた製図設計作業を、コンピューターで設計できる機能です。2DCADのほか3DCADもあり、組み立て作業や生産工程のシミュレーションといった、3次元空間への立体的なモデリングもできます。

さらにCADソフトウェアは、機械用、電気用、建築用、建築設備用、土木用といった分野別に専用のものもそろっています。

PLMのCADデータ管理は、データの整理や設計時に必要なデータの検索をかんたんにできる機能です。設計データの管理に関する無駄な工数や時間が削減できるほか、設計データの早期共有や部品共通化、標準化が可能となります。取引先毎に、複数のCADも効率的に管理できます。

CAE

CAEは、「Computer Aided Engineering」の略で、従来手作業による計算で解析していた結果を、コンピューターで解析できる機能です。おもに構造解析、流体解析、数値解析などが実現できます。設計者自身が製品の強度、振動、熱に関する評価を行えるようになるのがメリットです。試作や試験不要で計算やシミュレーションによる結果が得られるため、開発期間の短縮やコスト削減、環境負荷軽減につながるでしょう。

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技術情報管理(BOM管理)

技術情報管理(BOM管理)とは、以下のように部門毎に最適化されたBOMを総合的に管理できる機能です。
・M-BOM(製造部品表)
・S-BOM
・保守BOM
・設計部品表(E-BOM)

BOMをデータベース化することで、技術情報の一元管理が可能です。今まで紙やExcelで管理されていた技術情報の二重入力、検索に時間がかかる、属人化する、情報の利活用が進まないといった課題が解決できるでしょう。関連部門と、技術情報をシームレスに連携することも可能です。

3Dデジタルデータ

3Dデジタルデータを活用できる機能です。使用する機具や組み立て作業の手順、工数など詳細な製造情報を集約できます。3Dデジタルデータを活用することで、詳細かつ正確な製造情報を視野的に理解、かつ実施できるため、製造現場での品質向上や属人化防止に有効です。

VR

VRとは、「Virtual Reality」の略でコンピューター上に人工的な空間を作成し、現実空間と近い体験を得られる仕組みです。製造業向けのVRを活用すると、2Dのディスプレイ上では発見できなかった不具合を、3Dの中に入り込んで発見、検証し検討できます。

自動設計

自動設計は、標準化した製品やユニットの製品仕様を入力すると、見積図面や3Dモデル、見積書などを自動生成できる機能です。設計のスピードアップや、仕様の早期確定による設計の業務効率化が実現します。ほかにも製品の品質の均等化や業務の属人化防止、短期納品の実現にも有効です。

権限付与や閲覧制限

PLMシステム上で、ユーザーの権限付与や閲覧制限が可能です。ユーザーごとに情報へアクセスできる範囲を限定できるため、機密情報の流出といったセキュリティリスクの防止にもつながります。

ワークフローの管理機能

設計現場のワークフローを管理できる機能です。各工程を可視化し、システム上で申請や証人といった進捗のステータス変更ができます。作業の進捗状況を一覧で確認できるほか、不具合やミス、問題点の早期発見にもつながります。

PLMが製造業にもたらすメリット

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PLMを導入することで得られるメリットを解説します。

製品の品質向上

PLMシステムでは、取得したデータを分析して、情報を一元的に管理、共有することが可能です。
一元管理によって不具合をすぐに発見、修正でき、ワークフロー全体の最適化や、製品の品質向上が期待できます。また、製品ライフサイクルを迅速に改善しながら、品質テストの結果や製品仕様、設計データ等の情報が一元化され、品質向上だけでなく、製品の均一性や信頼性も確保できます。

既存製品についても、顧客の利用データの収集と可視化データの継続的な追跡によって、品質に問題があった場合でも早期発見し、早急に分析可能です。アフターサービスをスピーディに提供し、製品の品質改善もニーズのあるものを選定しながら無駄なく実行できるでしょう。

リードタイムの短縮

PLMによって製品に関するデータを一元管理できれば、調達や発注のタイミングを最適化できます。製造工程の見直しもスムーズに行えるでしょう。必要なデータや情報をすべてシステム上で管理できるため、紙ベースでの情報共有や開発と比較し、大幅に時間を短縮できます。

消費者の多様化や市場のトレンドの変化に対応するためには、PLM活用によるリードタイムの短縮、生産から製造、納品までのオペレーションの再度の変更が求められます。ニーズが多様化し、多品種・少ロット生産が重視されるようになっても、PLMの導入により、データを統合的に管理できるため、工期の短縮、生産性向上につなげられます。

PLMでは共有のデータベースとワークフロー管理により、情報のスピーディな共有と連携が実現します。万が一設計変更などのイレギュラーな事案が発生しても、すぐに組織全体で問題点を理解し、タイムリーな意思決定と迅速なプロジェクト進行が実現します。

コスト削減

PLMでは製品開発や生産での人件費、原材料などのコストをプロセスごとに把握、共有できるようになります。無駄な作業や重複したプロセスの削除によってコスト削減につながるでしょう。
また、実機を使用しないシミュレーションにより、人件費や原材料費などのコストもカットできます。

不良品・リコールの削減

PLMによって品質が向上すれば、不良品やリコールが発生する可能性も減らせます。

企業の優位性や競争力の確保

PLM導入で製品に関するデータの可視化はもちろん追跡も容易になり、製品の問題の早期発見や原因分析がスムーズに実行されます。顧客へのアフターサービス、不良品やリコールに迅速に対応でき、企業としての信頼性が高まり、競合製品に対する競争力や優位性の向上にもつながるでしょう。

まとめ

PLMの概要やPDMとの違い、重視される背景、PLMの持つ機能やメリットについて解説しました。PLMは多様化する市場ニーズや変化の早いトレンドに対応するための有効な手法です。

全国30か所以上の拠点によって迅速・綿密な対応が可能なテクノプロ・デザイン社は、PLMの構築支援も提供しています。業務効率化やリードタイム短縮などを検討している方は、お気軽にご相談ください。

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