メタバース・デジタルツイン

製造業におけるARの活用|VR、メリットや導入のコツ、事例6選

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ARの技術進歩に伴い、製造業における活用がますます注目されています。
この記事ではARの概要や製造業での活用方法、製造業にARを導入する際のポイントを解説します。

製造業ARをご検討の際は、3Dモデルを活用したARコンテンツの作成や、デジタルツイン環境の構築にも多くの実績があるテクノプロ・デザイン社へご相談ください。お客様の目的に合ったAR導入をご提案いたします。

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目次

ARの概要と製造業で注目される理由

AR(拡張現実)MR(複合現実)VR(仮想現実)
空間デバイス上の現実空間現実空間と仮想空間仮想空間
見え方AR 製造2AR 製造5AR 製造4
デジタルコンテンツの
操作の可否
デバイス上で操作可能直接操作可能

ここでは、ARの概要や他の関連技術とARとの違い、ARがなぜ製造業で注目されているかについて解説します。

ARとは

ARはAugmented Realityの略で、「拡張現実」と訳されます。ARの特徴は、現実空間にデジタルデータを投影・表示できる点です。スマートフォンやタブレット、スマートグラスなどを通して現実とデジタルデータが融合した世界を見ることができます。

ARの技術によってさまざまな分野で利便性の向上が期待できるため、これからの活用拡大が期待されています。

ARの仕組みを詳細に知りたい方は、以下の動画も参考にしてください。

引用:ARとは?|ARとは拡張現実のこと。ARとVRの違い、仕組みや活用事例など、図解を使って3分でわかりやすく解説します

また、製造業におけるVRについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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ARと他の関連技術(VR、MR、XR)との違い

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ARと似た技術にVR、MR、XRといわれる技術があります。ここでは、それら関連技術とARとの違いについて解説します。

VRとは

VRはVirtual Realityの略で、「仮想現実」と訳されます。VRは、現実世界とは異なる仮想空間に新たな世界を生み出します。

専用ゴーグルを介して360°の視野で仮想空間を体感できます。実際にその空間内を動いたり、その場で他人とコミュニケーションを図ったりしている感覚を得られる技術です。ARと違い、現実世界は全く関与しません。

MRとは

MRはMixed Realityの略で「複合現実」と訳され、ARとVRをミックスさせた技術です。MRの技術によって、現実世界と仮想空間との融合が実現します。

ARよりもハイレベルなインタラクションを実現し、たとえば360°の現実空間に表示させたデジタルデータに近づいたり、操作したりすることが可能です。

XRとは

XRはExtended Reality/Cross Realityの略称で、AR・VR・MRなどの総称です。日本語では、そのまま「エックスアール」や「クロスリアリティ」と呼ばれています。

XRは、ARを始めとした現実世界と仮想世界とを融合させる技術全般を意味します。

各技術の詳細や違いは、以下の動画も参考にしてください。

引用:【VR/AR/MR事例解説】XR×ビジネス活用の最前線

ARが製造業で注目されている理由

製造業においてARは、設備メンテナンスや技術者のトレーニングを効率的・効果的に実施したり、人件費などのコスト削減に貢献するなど多くのメリットがあるため注目されています。また、人材不足は製造業における大きな問題ですが、ARを活用することで作業の効率化などによって緩和が期待されます。
これらのことから、製造業におけるAR市場は、今後大幅に成長していくとみられています。(※)

ARのような最新技術を取り入れDX化を加速させていくことが、製造業の持続的な成長の助けになるでしょう。

※出典:https://www.gii.co.jp/report/grvi1363476-augmented-reality-virtual-reality-manufacturing.html

製造業におけるARの活用場面

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製造業において、ARはさまざまな用途への活用が考えられます。ここでは、ARの具体的な活用方法を解説します。

3Dデータを活用したマニュアル類の表示

ARを利用することで、組立手順書や作業マニュアルなどがデジタルデータとして視覚的に表示可能です。3Dデータを活用したマニュアル運用も可能です。

たとえば組立手順書を元に作業を行う際、図や写真などの2次元情報だけでは詳細が分かりにくい場面もあるでしょう。ARを使って3Dモデルを表示させれば、現物と3Dモデルとを見比べながら作業ができ、2次元情報のみを参照するよりも分かりやすくなります。
従来の紙ベースのマニュアルと比べて分かりやすい情報を作業者に届けられ、3Dデータを活用したマニュアルをARで表示・運用することで、作業効率の向上が期待できます。

点検・保守などの作業支援

ARは点検や保守作業の際にも役立ちます。
たとえば現場で作業しながら状況に応じて次の操作手順をリアルタイムでガイダンスする機能を、AR上に実装可能です。不明点は別の場所にいる管理者や経験者などからアドバイスをもらいながら作業することもできます。

リアルタイムガイダンスを作動させると、実空間に重ねてAR画面に作業手順の指示が出てきます。作業者が画面上の指示通りに進めれば、問題なく作業終了する流れになっています。作業者に対して具体的な手順を示すことができるので、作業ミスのリスクを低減可能です。

ARによる作業支援を現場に上手く落とし込めれば、迅速かつ正確な対応が可能となります。

作業トレーニング

ARを活用したトレーニングは、従業員のスキル向上に大いに貢献します。ARなら新人や初心者でも作業内容を理解しやすいコンテンツを提供できるからです。

製品の3D表示やリアルタイムガイダンスは、初期教育の充実にも役立ちます。これにより、教育期間の短縮が期待できるでしょう。また、完成度の高いコンテンツを一度作成してしまえば使いまわしが効くことも大きなメリットです。指導者が新人に付きっきりになる期間を短縮でき、指導者不足の緩和にも役立ちます。

教育期間の短縮や指導者不足対策にも、ARを活用したトレーニングは有効です。

工場レイアウトや搬入経路の事前検討

新設備の導入やレイアウト変更を検討する際にも、ARは有効です。
たとえば新しい設備の配置や動線のシミュレーションなど、工場レイアウト検討にARを活用することで、実際の設置作業に入る前に問題点の洗い出しができます。

平面図を用いたレイアウト検討とARによる3D表示とを併用することで、実際の設置面積や作業スペースをより正確にイメージできるでしょう。

製品レビュー

新製品のレビューを行う際もARが活躍します。ARを用いることで、3DCADやCAEのデータと現物とを重ね合わせられ、より詳細なレビューの実現が可能です。

製品レビューでは、相手が必ずしも図面を読めるとは限りません。ARの技術を活用すれば、図面を読めない場合でも直感的に製品の形や大きさを伝えられます。
また、パソコン上に3DCADを表示させることでも製品の形を確認することは可能ですが3DCADの閲覧だけでは、実際の大きさがどの程度かを感覚的につかむのは難しいでしょう。現実空間と対比できる点において、ARは3DCADよりも有利といえます。

ARを有効活用することで、より密な製品レビューの実施につながるでしょう。

プレゼンテーション・商談

ARはプレゼンテーションや商談においても効果を発揮します。製品やプロジェクトの詳細をARで視覚的に説明することで理解が深まり、よりスムーズに顧客とのコミュニケーションを図れるでしょう。

製品の展示会などにおいて、ARを用いたリアルタイムでのデモンストレーションを実施すればより説得力のある提案になります。

ARは、顧客とのコミュニケーションや提案を円滑にさせるツールでもあるのです。

デジタルツイン

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デジタルツインとは、現実の工場や機械をデジタル空間に再現する技術です。デジタルツインの情報を視覚的に表示させるために、ARを活用します。

デジタルツインにARを用いることで、リアルタイムでの設備状態の監視や、製品開発における各種シミュレーションを効果的に行うことができます。

近年、製造業においてもデジタルツインが注目を集めています。製造業におけるデジタルツインの活用方法は、以下の記事でも解説していますので参考にしてください。

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製造業におけるAR活用のメリット

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製造業でARを活用することには、多くのメリットがあります。ここでは、具体的にどんなメリットがあるのか解説します。

作業効率の向上

ARを導入することで、従来のやり方よりも作業効率を高めることが期待できます。ARなら、必要な情報をわかりやすく提供することで作業を支援できるためです。

複雑な作業工程であればあるほど、ARによる作業支援は効果を発揮するでしょう。視覚的なガイダンスをリアルタイムで行うことで、作業時間の短縮や作業ミスの削減が期待できます。

紙ベースの作業指示書の場合と比べて考えてみると、ARによるリアルタイムでの作業支援は以下のメリットがあります。
・現在の手順がどのページに記載されているかを探し出す必要がない
・直感的に作業でき、文章を読み解きながら作業する必要がない
・ガイダンス通りに作業すればよいので、作業順番のミスが起こりにくい

日常業務に費やす時間や作業ミスを減らすことは、ARを活用する大きなメリットです。

コスト削減

ARの活用によって、たとえば以下のようなさまざまなコスト削減が期待できます。

・試作回数の低減による試作費の削減
・トレーニングの簡略化による教育費用の削減
・作業効率向上による人件費の抑制

ARの導入によるコストメリットは少なくありませんが、実際にはAR導入コストをはじめとしたARにかかるコストもあります。費用対効果を考慮し、適切な箇所を検討し活用することが大切です。

技術の継承・人手不足の緩和

製造業が抱える課題の1つである「技術継承・人手不足」の問題も、ARの活用によって緩和されることが期待されています。

これまでの日本の製造業において、ベテラン技能者の知識や技術は可視化・言語化されておらず、技術継承がなかなか進まないという課題がありました。いままで蓄積できずにいたベテランの技術をARコンテンツとして残すことで、ARは次の世代へ技術を引き継ぐ架け橋となり得るでしょう。

ARコンテンツとして提供されたベテランのノウハウを新人や未経験者が学習し、短期間でスキルアップしていければ人手不足の緩和につながります。日本の製造業がこれから先も持続的に発展し続けるためには、ARを始めとした新たなテクノロジーとの融合が不可欠です。

製造業にARを導入するポイント

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次に、製造業へARを導入するポイントを解説します。ツールやシステムは導入するだけでは意味がありません。効果的な運用を行えるよう、配慮しておきたいポイントをおさえておきましょう。

ARを導入する目的を明確にする

ARに限らず、新しいツールやシステムを導入する前にまず「導入する目的」を明確にすることが重要です。

コストや人材確保など各企業で抱えている課題は何かを整理し、どんな手法を取ればその課題が解消しそうなのか、十分に検討しましょう。

AR活用を前提とした業務プロセスを検討する

ARを導入するにあたり、場合によってはAR活用を前提とした業務プロセスを検討する必要があります。とりあえず現場にARを導入してみたものの、従来の業務プロセスよりも非効率になってしまっては本末転倒です。

実際には、導入したもののシステム管理者と現場とで思惑が一致せず、スムーズな運用に時間を要することもあるでしょう。小さく始めてトライアンドエラーを繰り返し、最適な業務プロセスを少しずつ探っていく必要があります。

デジタルコンテンツを用意する

ARの効果を最大限に引き出すためには、高品質なデジタルコンテンツが欠かせません。
手順書や作業支援のガイダンス、製品の3Dモデルなどのコンテンツを準備する必要があります。

既存の手順書があればその内容を移植したり、3Dモデルは製品設計で作成したデータを元にするなど、既存の資産を上手く活用し、AR導入における負担を軽減できるようにしましょう。

デバイスや通信環境を整える

ARを円滑に運用するためには、適切なデバイスや通信環境を整える必要もあります。

スマートグラスやタブレットなど作業に適したデバイスを選定し、携帯性現場での操作性を確認しましょう。5GなどによるARの利用に耐えうる通信環境の整備や、セキュリティ対策も重要なポイントです。

ARの導入効果を計測できるようにしておく

ARを運用する前に導入目的に応じた評価指標を設定しましょう。導入効果を定量評価できるようにしておくことが望ましいです。

たとえば新人の作業トレーニングに費やした時間の平均を、AR導入前後で比較してみるなどがよいでしょう。数値比較できる指標があると導入効果が可視化され、その他の業務改善へ手を広げるモチベーションにもつながります。

製造業におけるARの活用事例6選!

ARの製造業での活用事例は多岐にわたります。ここでは、ARが実際にどのような使われ方をしているのか、事例を紹介します。

三菱重工業

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引用:https://www.mhi.com/jp/business/technology/core_technologies/ai_dx.html

三菱重工業株式会社は、作業指示情報や部品情報を現場でAR表示させ活用しています。これにより紙の手順書を見る手間が排除され、実際の製品を見ながら検査記録を入力できるようになり、生産性の向上につながっています。

AGC

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引用:https://www.agc.com/news/detail/1200107_2148.html

AGCは、開発・製造現場へのAR導入を積極的に行うことで開発のスピードアップを図っています。本技術により開発者間のコミュニケーションを促進し、素材開発全体のスピードアップに繋がる見込みです。

NEXCO中日本グループ

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引用:https://www.c-nexco.co.jp/activity/proposal/pdf/technology_plan01.pdf

NEXCO中日本グループでは、安心・快適な高速道路を24時間365日提供するための技術戦略のひとつとしてスマートグラスを活用した現場管理支援を掲げています。ほかにもAI画像処理による異常検知などデジタル化を推進しています。

DHL

引用:ビジョンピッキング – 拡張現実(AR) / Vision Picking – Augmented Reality

物流企業のDHL社は、オランダにおいて、倉庫管理向けARを活用したスマートグラスの試験導入プロジェクトを成功させました。使いやすさも従業員から高評価を得たそうです。
スマートグラスを導入することで、作業者は伝票や筆記具で手がふさがることもなく、生産性は劇的に向上し、ミスが減少しました。

株式会社不動産SHOPショップナカジツ

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引用:https://nakajitsu.com/news/59161p/

株式会社不動産SHOPナカジツは自社の分譲住宅を建築予定の更地に、これから建つ家をAR(拡張現実)で確認できるサービスを中部地方で初めて導入しました。
実際に建った後のイメージが湧かないといった理由で購入に踏み切れないお客様の不安を払拭し、購入の決断をサポートします。

テナリス

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引用:https://www.tenaris.com/en/news/2021/vr-and-ar-technology-used-to-manage-argentine-project-from-italy

アルゼンチンのテナリス社のシデルカ製鉄所は、複合現実デバイスを使用してイタリアからのリモート支援を受け、製鉄所の炉用の新しい取鍋の立ち上げを開始しました。このツールは仮想現実 (VR) と拡張現実 (AR) を組み合わせて、オペレーターに膨大な情報とリソースを提供します。
アルゼンチンのオペレーターとイタリアのテナリスの専門家が、3D投影、ビデオ、またはデータアーカイブを視覚化して操作できるようになり、ツールのHDカメラとセンサーは手の動きをコマンドに変換し、リモートアシスタンスを容易にしました。

まとめ

ARの概要や製造業における活用方法や製造業にARを導入するメリット、導入事例などを解説しました。ARを有効活用することで、製造業の業務改善を進展させられるでしょう。

ARの導入は、目的に応じて適切なAR環境の構築がポイントです。テクノプロ・デザイン社ならARはもちろんVR/MR/XRについても、お客様の課題に沿った最適な環境構築をご提案をさせていただきます。ぜひご相談下さい。

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